JIS Z 2305改正について(森専務)

今年最初の書き込みになります。

 

今までこの書き込みはホームページという性質上、特定の誰かに向けてということではなく、漠然と非破壊検査についての知識のない一般の方に向けて、ということで書いていたつもりでした。しかし今回に限っては私ら関係者にしか理解出来ないような内容かもしれません。悪しからずということで。

 

さて昨年秋期に受験したJSNDIの赤外線サーモグラフィ・レベル1ですが無事合格することができました。その勢いに乗ってレベル2も受験してしまおうということで、1月19日から23日までの5日間赤外線サーモグラフィレベル2の試験対策の講習会に行ってきました。東京・池尻大橋にある大橋会館ということろが会場です。日曜日関係なしで8時間を5日間ぶっ通しの講義でした。

 

その中で技術文書に関する講義がありました。手順書、指示書といった話です。その講義中ISOとJISの整合性についての解説があり私ども検査会社の中で今懸案のISO 9712とJIS Z 2305の話が出てきたわけです。

 

ISO 9712やJIS Z 2305は何についての規格かといいますと、「非破壊試験ー技術者の資格及び認証」という規格名で、簡単にいうと非破壊試験の資格取得のための試験(テスト)をこれらの中で取り決めたようにやりなさいという内容の規格になります。その国際標準版がISO 9712で国内版がJIS Z 2305です。

 

現行のJIS Z 2305は2001年版ですが、その改訂版をこういった内容であと半年後には出すという通知が(その制定を担当している)(社)日本非破壊検査協会(JSNDI)から突然出されたのが昨年の6月でした。

 

その変更内容の主なところを挙げますと、実技試験で行う試験片の種類(テストの数)を2つから3つに増やす事、その会場設置の関係で今まで各地(札幌・仙台・千葉・東京・神奈川・新潟・名古屋・大阪・広島・福岡・長崎)で開催していた実技試験が今後は東京と大阪でのみでの開催になること、また経費が増えるため受験料を30%値上げすること、現在の時点で最長10年の資格の有効期限があるものも5年以内に新基準に以降しなければ無効とすること、などです。

 

これらの変更を半年後には実施する、もう決定事項です、と突然のアナウンスでした。ちなみにこれらの変更はJIS Z 2305を完全にISO 9712に対応させるために(あるいは付随して)発生するものとのことです。(MOD規格からIDT規格)

 

これを受け私ども検査会社は大反対しました。というのも私どもの業務はほぼ国内業務に限られ、国際標準化された資格は必ずしも必要ありません(私どもで行ったアンケートによると5%に満たない割合でした)。それにも係わらず国際標準化のための改訂を行うことにより大きな不利益を受けることになるからです。CIW検査業協会という私ども検査会社の集まりで大々的に(社)日本非破壊検査協会に陳情して、現在のところ解決・修正案を探るため改訂は保留状態となっております。

 

私どもの思いとしては(社)日本非破壊検査協会の学者さん達は実業界を知らず理想論だけで物事を進めようとするから実態にそぐわない改訂になってしまうのだといった理不尽な思いがあった訳です。

 

しかしその物の見方は一面的であるかもしれないと気付かされたのが今回の赤外線サーモグラフィの講義の解説でした。

 

その中で私が初めて知った知識としまして「WTO(世界貿易機構)/TBT協定(貿易の技術的障害に関する調停)」というもので国内規格をISOに整合させることが決められており日本もそれに調印しているという事実でした。ですので規格を制定している方々の理想論といったレベルではなく、日本には規格をISOに整合させる国際社会上の義務が一定以上あるということは事実な訳です。

 

講師(この方は実業界の方です)が続けるには「だからJISの改訂が発表された時点で騒いでも実はもうどうにもできない。そうではなくてISOの改訂案が出された時に自分たちの意見が反映されるように意見を言う必要があった。」とのことで、「うーん」とうならされた次第です。

 

「知らない間に世界と戦かわざるを得なくなっている、そういう時代になってしまっていたということですね。」という講師の言葉が非常に印象的でした。

 

(森専務)

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