3連覇中

 とっても遅ればせながらなんですが、新型コロナのパンデミックを迎える前年の2019年に弊社の社員が検査員の技術を競う大会で優勝しました。その名も、「UTまかせとき大会」!

 UTとは「Ultrasonic Testing」の略で「超音波検査」という意味です。

 

 (社)日本非破壊検査協会・関西支部の主催で開かれる関西センスドバドバやでネーミングのこの大会。2019年3月16日に大阪で第10回が7名の参加のもと開催されました。

 この大会の最大の特徴は「自然きず」を探傷して検査員の技量を競うことです。「自然きず」の反対語は「人工きず」ですが、「人工きず」は字のとおり人為に作られたきずで、その位置や形状は水平・垂直・平面・直線・真円などで単純です。

 対して「自然きず」はいわば偶然に発生したそれで、形状・発生箇所は、、、なんと言えばいいんでしょうか??つまり、いわゆる、フラクタル?複雑系?です。

 

 日本非破壊検査協会が認証するUT資格の実技試験では「人工きず」の入ったテストピースを探傷させられます。これは平等な難易度で多くの受験者に受験させるには同一・類似といえるようなテストピースが多数必要なためです。また当たり前の事ですが、あらかじめ定めた位置にあらかじめ定めた寸法できずが存在するため、探傷した者の技量がいかほどなのかは客観的に評価できます。

 

 対して、日々の実務では当然「自然きず」を探傷しているわけですが、「自然」ですから複雑です。例を挙げますと、きずを検出した場合はそのきずがどこからどこかまで伸びているのか、その長さを測定する必要がありますが、そのこと一つにしても一見簡単なように思えて、実はそうではありません。きず(例えば割れ)の始終端部は幅がマイクロの単位で細くしかも渦巻いたり枝分かれしたりしているためです。「正解」は分かるものではないといってしまってもいいのかもしれません。

 

 このことを別の事柄で表現すると、天気予報で見る天気図の作図に似ているのじゃないかと思います。(これ晴山さんを見ていて思いつきました!)

 天気図には等高線や前線などが描かれていますが、それは全国にある観測所の気圧などの測定値をもとに作図されるとのことです。ではその描かれた等高線や前線が唯一絶対の正解なのか?というと、たとえ元になる各測定値は真だとしても絶対正しいとはいいきれないわけです。では逆に、どんな形でもいいのか?というとそうではなく、ある一定の幅に収れんしていき、作成者によってやはり上手い下手があるはずです。

 

 これと同じような特徴を持つ「自然きず」を用いてのコンクールは私の知る限り「UTまかせとき大会」だけです。

 以前よりこの大会が開催されていることは知っていましたが、2019年にふと参加を思い立ち社内で挑戦者と募ったところ、富山営業所から一名果敢にも立候補したものがおり、それに私が任命した福井のエースを加えての2名が会社として初の参加にいたったわけです。

 

 競うための技術ではないのでいざ「勝負」という形になるとどうなっちゃうんだろ?という感じしたが、結果はエースが見事優勝。後に関係者から聞きますと一人だけ圧倒的な点数だったそうです。

 ちなみに本人から結果を聞いた時の私の感想は「やっぱ、そうなんだー」でした。それというのも彼の技量の精度というかもはや透視に近いその力量に度々驚かされていたからです。やはりあのレベルは突出していたのだなと妙に納得してしまいました。

 

 しかしこのエースの技量は会社が育てたものか?というと残念ながらそうではありません。これはひとえに日々高い追求心を持って業務に当たってきたエース自身の気質と努力によるところです。会社ができることは標準化されたそれこそ合格レベルの検査員となるまでの教育までで、傑作とか特級品ましてや日本一(!)を育てる術は持っていません。

 どのようにしてエースの技術を少しでも他の検査員に伝えてもらえるか?この点が私としてはとても悩ましいところです。

 

 さて、標題の3連覇中について。ご多分にもれずこの「UTまかせとき大会」もコロナ禍のため、この第10回からまだ開催されていません。なので暫定チャンピオンをホールドし続けている、ということに勝手にさせていただいています。あしからず。

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